ユークリッド平面上の定理の一つの発見法



 a と b が点または直線のとき, ab を以下のように定義します。
「a と b が点のとき, ab は a と b を通る直線,
a と b が直線のとき, ab は a と b の交点,
a が点で b が直線のとき, ab は a から b への垂線。」

 点または直線 a, b, c が従属しているとは以下のような特別な位置関係にある こととします。
「三つとも点のときは一直線上にあり, 三つとも直線のときは一点で交わるか互いに平行であり,
二つが点で残りの一つが直線のときは 2点を通る直線が残りの直線に直交し,
二つが直線で残りの一つが点のときは 2直線が平行である。」

 「AA', BB', CC' が従属していれば, (BC)(B'C'), (CA)(C'A'), (AB)(A'B') も従属している。」 が成り立ちます。
 A, B, C, A', B', C' がすべて点のときが デザルグの定理です。
 A, B, C が点で a', b', c' が直線のときに、 b'c', c'a', a'b' をそれぞれ A', B', C' に置き換えたものが, 定理 1  です。 この定理はある本に書いてありました。
 A, B', C' が点で b, c, a' が直線のときに B', C', bc, ca', a'b をそれぞれ B, C, A', B', C' に置き換えると
「A, B, C からそれぞれ B'C', C'A', A'B' への垂線が一点 L で交われば,
A から A'C' への垂線と B から B'C' への垂線の交点を D,
A から A'B' への垂線と C から B'C' への垂線の交点を E とすれば,
DE は BC に平行である。(左下図)」となります。
ここで, BD と CE が平行であることに注意すれば DE = BC となります。
また, B'C' への垂線は AL に平行な直線であることに注意すれば, 以下の定理が得られます。
三角形 ABC と点 L があるとき, 点 D, E, F を BLCD, CLAE, ALBF がそれぞれ平行四辺形となるようにとれば, ⊿DEF ≡ ⊿ABC である。」
証明は簡単です。

 A, A' が点で, b, c, b', c' が直線のときは
「bb' と cc' を通る直線が AA' に直交していれば,
A から b への垂線と A' から b' への垂線の交点を D,
A から c への垂線と A' から c' への垂線の交点を E とすれば,
bc と b'c' を通る直線が DE に直交している。(右上図)」
となります。

 a, b, c, l のそれぞれが点または直線のとき, 「((al)l)(bc), ((bl)l)(ca), ((cl)l)(ab) が従属している。」から, 以下の五つの定理が得られます。
(注 : 点のときは大文字, 直線のときは小文字で表すことにしたとき
(AL)L は L を通って AL に直交する直線であり,
(al)l は al を通って l に直交する直線であり,
(Al)l は A から l へ下ろした垂線の足であり,
(aL)L は L を通って a に平行な直線です。
)

定理 2  定理 3  定理 4  定理 5  定理 6 

最初の 定理 2 はある本に書いてありましたが, 他の四つは見たことがありません。

 a, b, c, l がすべて直線のときは
「al を通って l に直交する直線へ bc から下ろした垂線,
bl を通って l に直交する直線へ ca から下ろした垂線,
cl を通って l に直交する直線へ ab から下ろした垂線は一点で交わるか互いに平行である。」
となりますが, 上の三垂線は(ユークリッド幾何学では) l に平行ですから, あたりまえの命題になってしまいます。
 a, b, c が直線で L が点のときは
「L を通って a に平行な直線へ bc から下ろした垂線,
L を通って b に平行な直線へ ca から下ろした垂線,
L を通って c に平行な直線へ ab から下ろした垂線は一点で交わる。」
となりますが, 上の三垂線は(ユークリッド幾何学では) bc, ca, ab からそれぞれ a, b, c への垂線に他なりませんから、三辺形 abc の垂心で交わります。

 「a, c, e が従属し, b, d, f も従属すれば, (ab)(de), (bc)(ef), (cd)(fa) も従属する。」 が 成り立ちます。
A, B, C, D, E, F がすべて点のときがパップスの定理で, a, b, c, d, e, f がすべて直線のときがパップスの定理の双対命題です。
A, B, C, D, E が点で f だけが直線のとき, Ef は E から f への垂線ですが, BD が f に直交するので E を通って BD に平行な直線であることに注意すれば, 次の定理になります。
「5点 A, B, C, D, E のうち A, C, E が一直線上にあれば,
AB と DE の交点,
E を通って BD に平行な直線と BC の交点,
A を通って BD に平行な直線と CD の交点は一直線上にある(下図参照)。」
(注 : この定理はパップスの定理において F を直線 BD 上の無限遠点にしたものと考えることもできます。)

A, B, D, E が点で c, f が直線のとき, A を P, (cD)(fA) を Q, D を R, B を S, (Bc)(Ef) を T, E を U に置き換えれば, 次の定理になります。
 「六角形 PQRSTU において PQ, RS, TU が互いに平行であり, QR, ST, UA も互いに平行ならば, PS, QT, RU は一点で交わる。」
(注 : この定理はパップスの定理の双対命題の特別な場合と考えることもで きます。)